「・・・お、落ち着いた?」
荒い息を吐いてルイーダはリュウに尋ねた。
「ふぁい・・・。」
頬を赤く腫れ上がらせながらリュウが答える。
恐慌状態になったリュウをルイーダは頬を乱打することで回復させた。
「あのー、普通優しいお姉さんキャラでしたら、優しく抱きとめるとか、そういうの。」
「対象があんたである限りありえないわね。
まずは力技。そんな癒し系は最終手段。」
「そうですか、ぐふっ。」
リュウは力尽き、ベッドに顔を伏せる。
「ったく。気にするなとどれだけ言ったことか。」
頬を流れる汗を拭いながら毒づく。
「sir.無理です、sir.」
リュウが自分の顔に回復魔法をかける。
「俺が原因でそうなったんだし。」
「それはわかるけど。
あんたが思い出すたびに苦労する人間が複数名いることを考えて欲しいもんね。
思い出しても迷惑かけない。いい?」
「ごめん、リナ姉ちゃん。」
ルイーダは力の限り睨みつける。
リュウは萎縮する。
「ま、いいわ。てか本名呼ばないでよ。」
「恥ずかしいの?」
拳がリュウの顔にめり込む。
「本名はベッドの中でしか呼ばせないの。」
「あだるとー・・・。」
胸を張り笑うルイーダを少々赤面しながら笑う。
「んで、リナ姉ちゃん。」
「呼ぶなっての。何?」
「冒険者名簿見て良い?」
「見たいの?」
「まあ、ちょっと興味が。だめ?」
「良いよ。でも時間めっさかかるよ?」
「別にいいよ。泊まってくし。」
「・・・あんた明日仕事は?」
「昨日で仕事納め。」
「・・・つい最近まで家留守にしてたんだから帰ったら?」
「やだ。」
リュウはふて腐れて、傍らに置いてあった雑誌を手に取る。
「・・・あたし、良くあんたの家の人に睨まれてるんですが。」
「仕方ないんじゃない?」
リュウが雑誌に目を向けたまま、抑揚の無い声で言う。
「睨まれるようなことしたんだから。」
ルイーダの顔が笑顔のまま固まる。
「・・・ばれてるの?」
「それは無いけど。怪しまれてるのは確かだねっ。」
ベッドに寝転びながらリュウは言う。
ルイーダは頭を抱える。
「勘弁してよ・・・。あたしのモットーは誰からも愛されるウキウキ美女なんだから。」
「あきらめてー。じゃ、ここで待ってるからとっとと名簿持ってきてね。」
手をひらひらさせてルイーダを送り出そうとする。
その様子に笑顔でリュウの顔を掴む。
「え、何?」
「大人しく。」
リュウの頭を太ももに挟み、腕を背中で極める。
「待ってなさい!」
そのまま飛び跳ねて床に下りる。
腕を極められているため受身が取れず、
なす術も無く顔を、体重を乗せられて叩きつけられる。
「がはっ!」
ルイーダは力なく腕を床に下ろすリュウを満足そうに微笑み、部屋を出て行った。
「ぺ、ペティグリーかよ・・・。」
リュウはそう言い残し、意識を失った。



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