「ねえ!リュウ!」
ヒカルが魔物の間を駆け抜けながら叫ぶ。
「なんだ!」
ヒカルの後を追い、弱っている魔物に止めを刺しながらリュウが答える。
「ま、まだかな?」
「わかんない!」
リュウは不機嫌そうに答える。
「遅すぎると思わない?」
「すっごい思う!」
(いつまで待たせるんだよ!)
リュウがキャタピラーを切り刻む。
「まさか、向こうにも魔物がいたとか・・・。」
ヒカルが心配そうに丘の上の大木を見る。
「見た感じ、いなさ気だけ・・・ど・・・。」
リュウも魔物を切り伏せながら、視線を大木に向けた。
「・・・。」
「・・・・・・。」
「リュウ・・・。」
ヒカルとリュウは呆然とした。
それでも剣を振り回すのは忘れない。
(俺たち頑張るなぁ・・・。)
リュウがしみじみと考える。
「目、良かったよね。」
ヒカルが無気力に質問してくる。
「ほどほどには。」
「何見えた。」
「不思議なもん。」
「そう。あたし、ちょっと違うな。」
「なに?」
「馬鹿が見えた。」
(同じもん見えてんじゃねえか。)
そして、暫くの間無言で魔物を刻み続ける。
「・・・リュウ!」
堪えきれなくなったヒカルが怒りを振り撒きながら叫ぶ。
「なんすか。」
「なんとかして!」
血走った目で丘の上にいる馬鹿を指差す。
(あー、ったく。)
リュウが戦闘中にも拘らず頭を抱える。
そして溜息を深く、深ーく吐く。
「・・・魔力練るから、暫くよろしく。」
「了解。」
ヒカルが短く言うと、黙々と剣を振るった。
(あーあ、激怒してるよ。)
リュウが残り少ない魔力を掻き集める。
(あと3発ってとこだな。)
そして、目標に対して精神を集中し始める。
(あとで、ヒカルに謝れよ!)

***

「えー、本当に?」
「うん、ありえないでしょ?」
「もうちょっと照れても良いもんだと思うけど。」
「まー、あたしの反応が緩かったせいもあるけどね。」
「・・・そうこれ見よがしに自慢しないで欲しいな・・・。」
「ふふり。羨ましいかね?」
「べっつにー。てか押し付けないでよ。」
「あったらあったで結構苦労するんだけどね。
ああ、ごめん。あんたには分からないよね。」
「ほー・・・。」
「痛い痛い痛い痛い、取れる。」
「まったくもー。しかしどうしてああも無反応なんだろね。」
「そうなんだよね。まったく・・・。」
「でも、やっぱり。ね?」
「ねー。」
レオナとコトノは腰を落ち着け談笑していた。
その二人の足元に、
「うわあっ!」
「きゃあ!」
熱線が打ち込まれる。
「な、なに?」
「ギラ?」
後ろに吹き飛ばされた二人が顔を見合わせる。
発射予測地点は、麓。
麓には魔物がたっぷり。
その中を駆け巡る二人。
二人ともこちらに中指を立てた拳を掲げている。
「あ。」
そして思い出したようだ。

***

「気付いたみたいだ。」
リュウが剣を構えながらヒカルに伝える。
遠くで慌てて動く二人を確認し、ヒカルが苛立たしく剣を振るう。
「あとで説教してやるっ。」
「ほどほどにな。」
(さて、あともうちょい頑張りますか。)

***

「そっち、早く書き終わってよ!」
「あー、そんなすぐ出来ないってば!」
レオナとコトノは怒鳴りあいながら、ひたすら足元に陣を描く。
「いや、すっかり忘れてたわ。」
「あとでヒカルに怒られるね。」
「うん、誤魔化そう。」
「いやいやいや。」
口を動かしながら、手を通常の三倍の速度で動かす。
「出来た!」
二人の足元に五芒星を基調とした複雑な魔方陣が出来上がる。
「・・・間違いは・・・ないね。」
コトノが細部をチェックする。
「あとはコトノ次第だね。」
「あんまり期待してよ?」
「たっぷりしてあげるよ。」
「よし。んじゃ合図送るよ。」
「おーけ。残る役割はコトと陣の防衛ね。」
「任せたよ!」
コトノが空に手を揚げる。
(待たせたわね!)

「イオっ!」


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